Research Highlights:
OpenMXプロジェクト
OpenMX project
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近年の超並列計算機や計算手法の著しい発展により、密度汎関数理論に基づく計算物質科学は量子力学的な観点から分子や 固体の性質を調べる上で、非常に重要な役割を果しています。シミュレーションで取り扱う対象は、工学分野で議論されるような、 より複雑な系へと拡がっており、"より大規模"な系を"より高精度"に計算する手法の開発が現在の大きな課題です。

実問題に則した複雑な系の計算を実現するためには広範囲の学問分野を融合する必要があります。物理や化学の基礎理論に 基づく様々な計算方法の開発、効率的な数学的アルゴリズムの開発・実装、プログラムの高度チューニングや超並列計算機の ための超並列化手法等を高度に連携させ、シミュレーションが迅速に行えるように一つのプログラムパッケージとして整備すること が重要です。 欧米ではシミュレーションプログラムパッケージの重要性が、早くから認識され、多くの優れたソフトウエアが開発されてきました。 私達は自分達自身で、その様なプログラムパッケージを開発・維持していくことが重要だと考えています。 なぜならば、既存のソフトウエアでは取り扱うことの出来ない非常に難しくかつ重要な問題を解き明かしていくためには、 困難なシミュレーションを実現可能とするプログラムパッケージを自分達自身で開発する以外に方法がないからです。 またソフトウエアを自分達で組みあげていくという"作る楽しみ"も、何ものにも代えがたいものです。

私達は2000年よりOpenMXプロジェクトを立ち上げ、大規模電子状態計算を実現するためのソフトウエアパッケージを 開発維持してきました。OpenMXは密度汎関数理論、擬ポテンシャル法、数値局在基底法に基づくソフトウエアパッケージ で、"物質探検者"へのプラットフォームになってほしいという願いを込めて"Open source package for Material eXplorer"から名付けたものです [1-3]。 このソフトウエアパッケージはGNU General Public License (GPL)の規約に則り、広く一般公開されており、 現在では世界中の大学、国立研究所、企業における多くの研究者に活用されています。 開発者のコミュニュティーは日本だけでなく、韓国、中国、スペイン等に拡がっています。 私達は今後もOpenMXプロジェクトを継続的に推進することで、より現実に則したシミュレーションを実現し、物質科学の 発展に寄与していきたいと考えています。

  1. "Variationally optimized atomic orbitals for large-scale electronic structures", T. Ozaki, Phys. Rev. B 67, 155108 (2003).
  2. “Efficient projector expansion for the ab initio LCAO method”, T. Ozaki and H. Kino, Phys. Rev. B 72, 045121 (2005).
  3. “OpenMX website”, The OpenMX developer's team.