Research Highlights:
高速球ベッセル変換
Dual spin filter effect in a zigzag graphene nanoribbon

球ベッセル関数は球座標系の動径空間において完全な基底関数を構成するため、 この関数を含んだ積分の数値的評価は科学技術計算において重要性を持っています。 この積分は球ベッセル変換として知られており、数学の体系上はハンケルもしくはフーリエ-ベッセル変換の 一つとして、分類されています。多くの物理的問題は球座標系で取り扱うと便利なことがしばしばあり、そこでは 球ベッセル変換が重要な役割りを果しています。たとえば原子や核の散乱問題、宇宙マイクロ波背景放射、 また分子や固体の電子間相互作用などが例として挙げられます。

私達は球ベッセル変換を効率的に行うために新しい数値計算アルゴリズムの開発に取り組みました[1]。 提案する計算手法の計算コストは積分点Nに対してO(N log2N)として増加し、効率的に 球ベッセル変換を実行することが可能です。 このアルゴリズムは球ベッセル関数の積分表示形の導入と、さらに変数変換を工夫することで、 導出されたものです。全体としてのアルゴリズムは高速フーリエ変換と漸化式計算から構成されています。 これまでの高速球ベッセル変換は動径座標に対して対数メッシュを使用した場合に限られていましたが[2]、 私達の計算手法は一様メッシュを使用した場合に対して、初めて高速球ベッセル変換が可能であることを 示したものです。また本手法によって高次の方位量子数lまでの全ての球ベッセル変換を効率的に計算する ことが可能であり、様々な用途で活用できるものと考えています。

  1. "Fast spherical Bessel transform via fast Fourier transform and recurrence formula", M. Toyoda and T. Ozaki, Comp. Phys. Comm. 181, 277 (2010).
  2. "Numerical Fourier and Bessel transforms in logarithmic variables", J.D. Talman, J. Comput. Phys. 29, 35 (1978).